こんにちは。漫画大好き編集者のグルリンゴ(@entame13423)です。
今回ご紹介するのは、アフタヌーンのウェブ漫画サイト・「&Sofa(アンドソファ)」にて6月23日より連載開始された、泥ノ田犬彦『君と宇宙を歩くために』です。
「普通とは何か」。この普遍的な問いに、現代的なアプローチで切り込みます。
この物語に共感する人は、もしかしたら第1話を読み終えて涙するかもしれません。
私がそうでした。
『君と宇宙を歩くために』感想(ネタバレ)
個人的星取
☆4.3 これは素敵な作品だ……。
作者紹介
泥ノ田犬彦:読み切りで「東京人魚」( 【アフタヌーン四季賞2022秋 準入選】)。
妊娠が発覚した主人公が「命の責任」を考える物語です。かなりショッキングなラストが待ち受けている、こちらも必読の一冊です。寓話っぽさがありますね。
あらすじ・概要
勉強もバイトも続かないドロップアウトぎみなヤンキーの小林。ある日彼のクラスに変わり者の宇野が転校してくる。小林が先輩から怪しいバイトに誘われているところを宇野に助けられ、その出来事をきっかけに2人は仲良くなる。宇野のことを知れば知るほど彼の生き方に惹かれ、自分も変わろうと行動する小林だったが…。〝普通〟ができない正反対の2人がそれぞれ壁にぶつかりながらも楽しく生きるために奮闘する友情物語。
感想・評価
あの名作を思い出す
宇野くんの姿を見て、映画『シンプル・シモン』の少年を思い出しました。あの映画も素晴らしかった。
小林と宇野
学校内ではヤンキー的立ち位置の小林と、転校生でやってきた宇野。
転校初日の自己紹介で大声を発した宇野は、「マジでヤバいぞ」「あれは本物」と噂になります。
声は大きい、字がみっちりの汚いノート、独り言で笑っている。
ここでいう「本物」とは、作中であえて言及を控えている「自閉スペクトラム症(ASD)」を指していると思われます。ここでも控えるべきか迷いましたが、理解が大事と思うので……。
誰もが抱える悩み
小林は、「ハード・オフ」的な中古販売店でバイトを始めます。
が、ミスを多発してしまいます。
同僚の悪口を聞いてしまった小林は落ち込みます。「一度で覚えられるワケねーだろ……」「他のバイトはみな簡単そうにやってんのに…なんで俺はまちがえるんだ?」
わかる…わかりみがすぎる。恐らく誰もが一度は抱えた悩みに小林もぶつかっています。
ただ、小林はこれまでもすぐにバイトを辞めてしまっていました。いつも続かない。みなはお前は短期なんだよとごまかすけど、いったい俺は何に向いているんだ、と挫折を繰り返していました。
ちょっと根が深い問題。小林もまた「普通」ではいられないのです。
宇宙へと飛び立つ
宇野は、小林の友達の朔にからかわれます。その場では耐えた宇野でしたが、帰宅後、泣きはらします。汚いノートには「悔しくても泣くのは家に帰ってからにする」。
記憶力はいいけど平行作業が苦手な宇野は、メモをすることで失敗を回避していました。
わからないことがあるときは、宇宙に一人で浮いているような感覚。
『シンプル・シモン』でも同様の表現がありました。
ノートが命綱と語る宇野の姿を見て、小林は素直に「すげー」と感嘆します。
人と同じように生活するためには工夫が必要。そのことを意識してコミュニケーションを取り始めた小林は、バイト環境が上向くようになります。
「休憩に行くのが怖くない。休憩から帰るのが怖くない」
ルンルンと歩く小林。
この小林のセリフに大共感で、泣いてしまいました。すごくよくわかります。
自分が仕事に不得手で、「働く」という感覚がつかめない時、休憩時間は地獄になるのです。
再び同僚との軋轢が起こりますが、小林は宇野の姿を思い出して、踏みとどまります。
それからまた一波乱ありますが、続きはぜひ本編で。
キャラクター造詣が素晴らしい
キャラクター設定がうまいです。
ヤンキーは、コミュニケーション能力もあり度胸もあるので、仕事にはどちらかというと向いている印象があったのですが、もちろん小林のようにスムーズに作業を覚えられない人だってごまんといるはず。「やっぱヤンキーだからバカ」と言われている気もしてしまう。その造形がなんだかリアルでした。
宇野の純粋さが、他者に伝わり、他者も変えていく。感謝の気持ちがあれば、それを直接丁寧に伝える。その気持ちが相手にも大事になる。その過程がとても面白くて、自分自身の実生活でも参考にしなければと思いました。
「普通」ではないのです、みんな。だから悩みを抱えるわけで、どう折り合いをつけていくか、この漫画を読んで勇気をもらえました。
というかバイトリーダーぽい山田さんのような人が世界には多くいて欲しい!!自分もそうでありたいと願う今日このごろでした。
以上でございます!すでに第2話が公開されていますね。続きが楽しみです。
どうも、グルリンゴ(@entame13423)でした。
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