【最速】「マンガ大賞2023」全作品レビュー&大賞予想

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マンガ大賞2023 漫画

※【2023年7月追記】
『次にくるマンガ大賞2023』の予想記事は以下から。『次にくるマンガ大賞』と『マンガ大賞』の記事がどうしても混在して検索表示されるため。


今年もこの季節がやってきました。2023年1月24日に発表された「マンガ大賞2023」二次選考ノミネート11作品。

今回は大激戦の様相。【次にくるマンガ大賞】で評価された作品や、【このマンガがすごい!】大賞受賞作、すでに何十万部を突破している大ヒット作から、隠れた名作まで、どの作品が大賞になってもおかしくないラインナップとなりました。

今回は、「マンガ大賞2023」ノミネート作品をすべて読んだ上で、各作品のレビューと、大賞を予想していきたいと思います。たまたまですが、ノミネート作のほとんどを読んでいたので(それだけ既に話題になった作品が集まっているということ)、「最速予想」と銘打って紹介していければと思います。

各作品ごとのレビューは順次UPし、3月上旬には全ての公開を完了する予定です。
選考結果は3月中旬~下旬に発表予定とのことです。


早速ですが、まずは私の大賞予想です。

【2023年5月追記】

マンガ大賞2023の結果が4月に発表されました。順位は以下です。

・大賞『これ描いて死ね』とよ田みのる/小学館
・2位『あかね噺』末永裕樹,馬上鷹将/集英社
・3位『女の園の星』和山やま/祥伝社
・3位『正反対な君と僕』阿賀沢紅茶/集英社
・5位『天幕のジャードゥーガル』トマトスープ/秋田書店
・5位『日本三國』松木いっか/小学館
・7位『さよなら絵梨』藤本タツキ/集英社
・8位『スーパーの裏でヤニ吸うふたり』地主/スクウェア・エニックス
・9位『劇光仮面』山口貴由/小学館
・10位『タコピーの原罪』タイザン5/集英社
・11位『光が死んだ夏』モクモクれん/KADOKAWA

『これ描いて死ね』が大賞!!これは予想外でした。とよ田さん、おめでとうございます。
『金剛寺さんは面倒臭い』の時の熱狂的なファンが拡大した形です。ベテランが評価されたのは嬉しいです。作品はもちろん面白い!しかし完全にノーマークでした。すみません。

私が大賞予想していた『あかね噺』は2位でした。この勢い止めた『これ描いて死ね』はやはりすごいですね。メジャー作品が1位をとれず、は今年も証明されました。これが「マンガ大賞」の良いところですね。

3位は『女の園の星』。和山さん、やはり強い。ただ、本作で1位をとれないとなると、今後はちょっと厳しいかも…。

「タコピー」や「絵里」よりも「天幕」「三國」が上位に入るのは流石でした。

来年も楽しみです!

グルリンゴについて


★出版社での編集者歴15年以上。漫画、ビジネス書などの編集を経験。
☆年間の読書量は漫画100冊、書籍30冊程度。映画の鑑賞本数は年間150本程度。
Twitterでは最新のお勧めエンタメコンテンツを紹介。
☆「これは面白い!」と思った作品を人にお勧めするのが生きがい。

「マンガ大賞2023」大賞予想

◎=大賞予想 ○=大賞の可能性あり ▲=上位ランクイン予想

あかね噺『あかね噺』馬上鷹将、末永裕樹
女の園の星『女の園の星』和山やま
劇光仮面『劇光仮面』山口貴由
これ描いて死ね『これ描いて死ね』とよ田みのる
さよなら絵梨『さよなら絵梨』藤本タツキ
スーパーでヤニ吸うふたり『スーパーの裏でヤニ吸うふたり』地主
正反対な君と僕『正反対な君と僕』阿賀沢紅茶
タコピーの原罪『タコピーの原罪』タイザン5
『天幕のジャードゥーガル』トマトスープ
『日本三國』松木いっか
光が死んだ夏
『光が死んだ夏』モクモクれん

総評

考察① 特に指標となる漫画賞は「次にくるマンガ大賞」「このマンガがすごい!」の2つ。この漫画賞で上位にきている作品は、自ずと「マンガ大賞」でもノミネートもしくは高順位にランクインされる。

考察② 「このマンガがすごい!2023」では、オトコ編の第1位『光が死んだ夏』、第2位『さよなら絵梨』、第3位『タコピーの原罪』、第4位『あかね噺』、第5位『劇光仮面』、第6位『これ描いて死ね』、第7位『スーパーの裏でヤニ吸うふたり』と、「マンガ大賞」のノミネート11作品と見事に被る。さらにオンナ編の第1位は『天幕のジャードゥーガル』。選考委員が被っているのでは?と思うくらいの一致率。

考察③ 『光が死んだ夏』の「このマンガがすごい!」受賞はサプライズだった。Amazonレビューが2000件を超え、☆4.8と驚異的な高評価を維持している。ブロマンス作品としての熱狂的な支持層が一定数いる。今回も上位入賞はあり得る。

考察④ 「次にくるマンガ大賞2022」では、コミックス部門の第3位に『あかね噺』。WEBマンガ部門の第1位に『スーパーの裏でヤニ吸うふたり』、第2位に「正反対な君と僕」。ただこちらの賞はユーザー投票のため、まだ発掘されていない作品のランクインも多く、「マンガ大賞」との被りは少め。それでも「あかね」「ヤニ」「正反対」の上位は見過ごせない。

考察⑤ 『あかね噺』に勢いを感じる。落語という若年層にはとっつきにくい題材にも関わらず、週刊少年ジャンプ本誌では「呪術」や「ワンピース」を抜かす掲載順になることも。一見すると変化球的な作品に思えるが、落語で「真打」を目指す、いわばスポ根漫画で読みやすく万人に届きやすい。

考察⑥ 『女の園の星』は昨年、一昨年に続いて3年連続のノミネート。比較的顔ぶれが変わる「マンガ大賞」ではあまりに珍しい。しかも著者の和山やまは、一昨年は『女の園の星』のほかに『カラオケ行こ!』でも2位にランクイン。3年前には『夢中さ、きみに。』で7位にランクイン。和山やまに1位を取らせる動きがあっても不思議ではない。作品も最新3巻が素晴らしい出来。

考察⑦ すでに売れている作品でも上位にはくるが、大賞は取りづらいのが「マンガ大賞」流。大ヒット作となっている「タコピー」「絵梨」は不利か。「絵梨」は、昨年2位の傑作『ルックバック』のクオリティを超えてはいない。

考察⑧ その他にも漫画賞はたくさんあるが、現時点で参考になりそうな賞の結果が発表されていない。例えば去年のマンガ大賞受賞作『ダーウィン事変』は、「文化庁メディア芸術祭マンガ部門」優秀賞に選出されている。

考察⑨ 個人的な推しは『天幕のジャードゥーガル』。13世紀のイスラムとモンゴルが舞台。モンゴル後宮譚ということで敷居は高いが、読んでみるとその大傑作ぶりに驚く。主人公の聡明さと勇気に現代人が学ぶことはあまりに多い。女性の権利について描かれており、世に広く打ち出す意義もある。発掘感のある「マンガ大賞」1位感があるのはコレ。ただ渋すぎるか。

各作品レビュー

あかね噺

【内容紹介】

幼い頃、父の魔法の様な落語に魅せられた朱音は、父のある一席を機に自身も噺家としての道を歩み始める。17歳になった朱音が目指すのは落語界の最高位「真打」になること――。一流の技量を習得するため、様々な試練が朱音を待ち受け…!? 新生落語ヒロイン、ここに誕生!!
(引用:集英社公式HP)

【レビュー】

幼少期に父・阿良川志ん太の落語に魅了された娘の朱音。志ん太は真打ち昇進の試験で観客の喝采を浴びるほどの落語を演じる。間違いなく真打ち昇進と思われたが、当代一の落語家で阿良川一門のトップ・阿良川一生が下した判断は「真打ち昇進試験に挑んだ弟子の落語家を全員破門」するという驚愕なものだった。

落語に、いわゆる「スポ根」要素を組み合わせた異色の漫画。落語が題材ですので一見とっつきにくく思われますが、読んでみるとそんなことは全くなく、異色でありながらジャンプ漫画の王道な一作です。序盤から「なぜ父は破門されなければならなかったのか」というめちゃくちゃ気になる謎が提示されます。この謎を解き明かすために娘の朱音は落語家になり、真打ちになることで父親の仇を仇をうつ……というプロットが抜群に面白くて、引きがあります。読ませます。

朱音は父の破門のときから、阿良川家2番手の「泣きの志ぐま」こと阿良川志ぐまに落語を教わります。6年修行を重ね、ついに17歳で志ぐまに弟子入りを果たします。ここから、朱音が並み居るライバル達と競い、同門の先輩方に礼儀作法を教わり、真打ち昇進を目指していきます。

1巻から、馬上鷹将さんの絵が出来上がっています。うまい。可愛い。キャラごとの書き分けが成立している。落語の紹介シーンもワクワクします。著者過去作『オレゴラッソ』のときは、正直ちょっと見分けがつきにくくキャラクターを覚えられなかったので、相当な努力をされたのだと思います。キャリア10年選手がここで花開きました。

絵の魅力はもちろんですが、原作・末永裕樹さんの描く物語の面白さが秀でています。落語家で林家木久扇の弟子・林家けい木が監修に入っていて、このあたりの抜け目のなさも素晴らしいです。現在4巻まで刊行中ですが、あまりのリーダビリティの高さにあっという間に読み切ってしまいます。

「マンガ大賞」でも多くの選考委員に愛されると思いますが、難点としてはサクサク読めすぎることでしょうか。ただ2020年にスポ根×美術の『ブルーピリオド』が大賞を受賞していますので、賞との相性は悪くないはず。

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女の園の星

【内容紹介】

「声を出して笑った」の声、続出!!! 漫画賞総ナメ『夢中さ、きみに。』の和山やま初連載!

ある女子校、2年4組担任・星先生。生徒たちが学級日誌で繰り広げる絵しりとりに翻弄され、教室で犬のお世話をし、漫画家志望の生徒にアドバイス。時には同僚と飲みに行く…。

な~んてことない日常が、なぜこんなにも笑えて愛おしいんでしょう!? どんな時もあなたを笑わせる未体験マンガ、お確かめあれ!

(引用:Amazon商品ページ)

【レビュー】

現状、日常系マンガの最高峰だと思います。日常系マンガの難点はいくつかあります。「時間が進まない」「恋愛や交友関係が劇的に展開しない」など。『女の園の星』も例外ではありません。主人公・星先生の恋愛模様が繰り広げられるわけでもなく(家庭環境は徐々に明かされますが塩梅が絶妙)、生徒たち間で壮絶ないじめがあったり、目覚ましい成長が描かれるわけでは有りません

しかし面白いのです。これは著者の和山やまさんが「超シュールギャグ」の天才だから、としか言いようがありません。これが初めての連載作品ということに驚くのですが……。

一言で本作を言い表すならば、「人が人のことを想像する魅力」が凝縮されています。会話劇だけでも笑えるのですが、いわゆるモノローグ部分が的確で、その笑いを10倍にしています。気だるい先生に気だるい生徒たちがこんなにも愛おしく感じるのが不思議です。

前述ですが、和山さんはそろそろ大賞を取るべき漫画家です。『女の園の星』『カラオケ行こ!』『夢中さ、きみに。』どれも良作かつ話題作です。どの作品もなんとなく似たテイストを持っていると思いきや、テーマは異なります。『カラオケ行こ!』なんて、日常系に思わせて結構劇的なドラマが起こります。登場人物の成長も描かれます。

順当に考えれば今回のマンガ大賞は和山さんに贈られそうですが、いかに。

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劇光仮面

【内容紹介】

これは星をつなぐ者たちの物語である。
僕は何者でもない。僕は器に過ぎない。――それこそが僕の強さだ。そんな想いを胸に秘め、29歳の青年、実相寺二矢はアルバイトで日々を暮らす。舞台は「現代」、テーマは「特撮」、主人公は“何者にもあらず”!?!?『シグルイ』『覚悟のススメ』の鬼才、完全新境地の最新作!
我々は山口貴由の本当の才能をまだ知らなかった。(引用:ビックコミックBROS.net)

【レビュー】

劇薬。今回の「マンガ大賞」候補作の中では圧倒的にぶっ飛んだ一作で、ノミネートされたのが不思議です。つまらないというわけではなく、あまりに狂気ほとばしる作品でマニアックな題材なので、まさかこのラインナップに選ばれるとは……もちろん作者人気はありますが、驚きました。「このマンガがすごい!2023」第5位という実績があるので、間違いなく注目はされています。

アート思考なマンガに見えて、行われていることは「特撮」というサブカル全開のテーマで、しかし登場する面々たちには変な緊張感が漂い、とても「エンタメ」という明るい言葉では表現できない一作です。

劇光服という特撮用のヒーロースーツが、オタクの範疇を逸脱して、武装にまで繋がる異様さ。そしてスーツだけではなく己の肉体すらも武装化する異様さ。その異様さを共有しあっている仲間たちがいる心強さ。その暴力性が発露してしまうのではないかという恐怖。読んでいて心から怖くなるし、不安に苛まれます。この人達、これからどう生きていくのだろう、と……。

下馬評は低いかもしれません。ノミネートにより多くの人にこの作品が届くかと思うと、なぜか心配になります。そんな負の魅力を持った作品です。

ノミネートと関係ない不安点としては、『シグルイ』のようなラストになるとちょっと……という懸念はあります。

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これ描いて死ね

【内容紹介】

安海 相(ヤスミ アイ)は、
東京都の島しょ・伊豆王島に住む高校1年生。
漫画を読むのが大好きな彼女は、とある出来事がきっかけで
漫画を“つくる”ことを意識し始める……
少女を待ち受ける世界は、果たして!?
漫画大好き漫画家・とよ田みのるによる漫画家漫画!!
作品を生み出す苦しみも歓びも、
余さず描く漫画浪漫成長譚!!

(引用:『これ描いて死ね』公式HP)

【レビュー】

著者の前作『金剛寺さんは面倒臭い』は、「このマンガがすごい!2019(宝島社)オトコ編」第2位、「マンガ大賞2019」第7位と話題になりました。とよ田さんならではの独特の風味もつ作品に固定ファンがついているのは間違いないです。

『金剛寺さんは面倒臭い』よりは断然わかりやすくかつ読みやすいのが『これ描いて死ね』です。ジャンルとしては、いわゆる「漫画の漫画」。最大の特徴は、伊豆諸島の大島をモデルにした離島を舞台にしていることです。普通だったら、離島に住む女性高生たちがいかに離島から抜け出すか、がテーマになりそうなところですが、さすがとよ田さん、ひと味もふた味も違います。離島の高校での漫画部結成の話になるのです。彼女たちはやがてコミティアに参加するべく東京行きを検討しますが、彼女たちを突き動かすのは東京への憧れではなく、漫画への情熱なのです。そこが最高に上がります。とにかく離島と東京との距離感が絶妙で面白いです。

個人的にはかなり好きな一作ですが、わかりやすくなった分、熱狂的な書店員ファンがどこまでつくか。

さよなら絵梨

【内容紹介】

私が死ぬまでを撮ってほしい──病の母の願いで始まった優太の映画制作。母の死後、自殺しようとした優太は謎の美少女・絵梨と出会う。2人は共同で映画を作り始めるが、絵梨はある秘密を抱えていた…。現実と創作が交錯しエクスプローションする、映画に懸けた青春物語!!(引用:集英社公式HP)

【レビュー】

面白いです。私個人の作品への感情を入れると上位予想にしたくなりますが。

「藤本タツキフォロワー」な漫画家が登場するくらい、現代漫画界では非常に影響力のある著者。

「マンガ大賞2022」では『ルックバック』が第2位。ド級の傑作でした。逆を言えば、『ルックバック』でも2位だったのです。『さよなら絵理』が大賞をとるかどうかは、『ルックバック』よりも勢いがあるか、で判断できると思います(もちろんノミネート作の並びが異なるので一概には言えませんが、個人的見解)。

『ルックバック』 Amazonレビュー数 4900件超 ☆4.8
『さよなら絵理』 Amazonレビュー数 1600件弱 ☆4.8

評価はトントンですが、レビュー数は3倍の差があります。それだけ『ルックバック』はセンセーショナルでした。

書店店頭やAmazonの動きなどを見る限り、『ルックバック』が『さよなら絵理』よりも売れているのは間違いないでしょう。

個人的な作品評価としては、『さよなら絵理』のほうが好みですが、完成度が高くより多くの人に届くのは『ルックバック』だと思いました。

『さよなら絵理』の題材は、「映画の映画」「漫画の漫画」。こういったエンターテイメント/芸術がどのように私達の記憶に残るのか、記憶に「残せるのか」を切実に、かつ「爆破」という映画における古典的要素を利用してダイナミックに描いています。最近公開された話題の映画『バビロン』や『エンパイア・オブ・ライト』にも通ずる内容です。藤本タツキ恐るべし。

しかし『ルックバック』は、誰しもが持ったり感じたりしている「創造する力」を題材にし、それをとことんエモーショナルに描きました。まだ起きて間もない実在の事件を題材にするのは生半可な事ではなく、著者の勇気と意義も強く感じます。間違いなく愛され力が高いのはこちらの作品でしょう。

『さよなら絵理』での受賞は難しいと判断します。

スーパーでヤニ吸うふたり

【内容紹介】

社畜街道をひた走る、くたびれ中年男性の佐々木。
彼のひそやかな癒しといえば、日ごろから愛煙する煙草と、
行きつけのスーパーで働く女性店員 山田さんのにこやかな接客くらい。

仕事に疲れたある夜、癒しを求めてスーパーに向かうが、
目当ての山田さんはおらず、今どき煙草を吸える場所もなし…。
意気消沈した佐々木に「ここなら吸える」と声をかけてきたのは、
すこし奇抜な服装をした田山という女性だった――。

(引用:ビックガンガン公式)

レビュー】

いわゆる日常系です。恋愛要素の混じった日常系の特徴として、男女二人が登場し、惹かれ合い、惹かれ合いますが友達以上恋人未満の関係のまま物語は進みます。この飽きられがちな縛りからの脱却として、近年では『からかい上手の高木さん』(あえて結婚後のストーリーを番外編で描く)や『古見さんは、コミュ症です。』(男女の関係が進展する)といった人気作が誕生しています。

日常系といえば、イコール学園モノ、というくらい10代登場人物との相性が良いです。それを逆手に取ったのが『スーパーでヤニ吸うふたり』。登場人物は成人。それも片方は40歳を超えています。『恋は雨上がりのように』に近い組み合わせです。特筆すべきは、舞台が「夜のスーパー」であり、物語の骨格に「タバコ」を登場させ、かつ第1巻で驚きの真相を用意していることにあります。

コンビニとは違う夜中のスーパーの広々とした店内の雰囲気、気だるい感じやちょっとしたワクワク感、タバコを介することで自然発生する会話と繋がり、そしてコレまでの日常系にはなかったある仕掛け。主人公の中年男性・佐々木の天然ぶりが可愛く癒やされます。

マイナスポイントとしては、40代男性が、スーパーのレジ打ち女性に癒やしを求める……というのが、2023年の現代的な感覚から見ると結構危うい設定だということです。それに対してのエクスキューズはある程度用意されていますが、このあたりは好き嫌いが分かれそうです。見方によっては佐々木さんの生真面目さや天然さも行き過ぎるところもあるため、現実感はちょっと薄いです。

正反対な君と僕

【内容紹介】

元気いっぱいだけど周りの目を気にしてしまう鈴木は、自分の意見を言える物静か男子・谷くんに絶賛片思い中。だが周りの目が気になって普通に接せず、いつも谷くんにダル絡みばかり…。しかしある日勇気を出して、一緒に帰ろうと誘ってみたところ…!?
共感マックスの等身大ラブコメ、開幕!!
(引用:Amazon商品紹介)

【レビュー】

著者の代表作『氷の城壁』でも思いましたが、なかなか言語化しづらい青春の機微を的確に表現しています。面白いです。

一見するとギャル系女子と、一見すると根暗男子が付き合うところから物語は始まります。

見た目も性格も好みも正反対に思えた二人ですが、外見で判断してはいけません、二人の相性は抜群に良いです。

『氷の城壁』でもそうですが、漫画を通じて「人を見た目で判断するなよ」と優しく諭されている気がします。

少年漫画と少女漫画の絶妙な中間の位置にある本作。万人に受ける作品なので、上位に食い込み可能性は有りと見ます。

タコピーの原罪

【内容紹介】

地球にハッピーを広めるため降り立ったハッピー星人・タコピー。助けてくれた少女・しずかの笑顔を取り戻すため奔走するが、少女を取り巻く環境は壮絶。無垢なタコピーには想像がつかないものだった。ただ笑って欲しかったタコピーが犯す罪とは…!?
(引用:Amazon商品紹介)

【レビュー】

考察前提の藤本タツキさんの著作に比べると、ストレートなメッセージを描くのがタイザン5さんです。

センセーショナルな一作なのは間違いありません。「ジャンプ+」に首吊りの場面が掲載されたときの反響は凄まじいものでした。私自身、衝撃を受けました。小学生たちのこんな物語をジャンプで(というかメディアで)発信していいのだろうかと。

問題性はありつつ、きちんとエンターテイメントとしても楽しめる作りにはなっています。

絶望の中の救済の物語ですが、後半にかけて失速しているように感じました。主人公の絶望的な環境がこれでもかというくらい重ねられ、毒親・虐待・いじめ……類型的なパターンの連続になります。

いじめっ子にもいじめっ子なりの背景がある……という描き方をしていますが、あまりに壮絶ないじめを前にしては、どうしてもご都合的な展開にしか思えず、納得度が低いように感じます。

爆発的に売れた作品ですので、一定の票は集めると思います。ただ、かなり人を選ぶのは間違いなく、ランクインしても3位くらいかな…という予想です。

天幕のジャードゥーガル

【内容紹介】

後宮では賢さこそが美しさ。13世紀、地上最強の大帝国「モンゴル帝国」の捕虜となり、後宮に仕えることになった女・ファーティマは、当時世界最高レベルの医療技術や科学知識を誇るイランの出身。その知識と知恵を持ち、自分の才能を発揮できる世界を求めていたファーティマは、第2代皇帝・オゴタイの第6夫人でモンゴル帝国に複雑な思いを抱く女・ドレゲネと出会い、そして……!? 大帝国を揺るがす女ふたりのモンゴル後宮譚!
(引用:Amazon商品紹介)

【レビュー】

志の高い作品です。内容のきつさに比べて絵が可愛いのが『ペリリュー 楽園のゲルニカ』を彷彿とさせますね。もっと遡れば横山光輝『三国志』みがあります。

13世紀が舞台ですが、現代社会に通ずる教訓が描かれています。主人公のファーティマは「知識」を武器に、敵(かたき)であるモンゴル帝国に復讐を果たそうと誓います。

暴力が世の中から消えることはありませんが、私たちが暴力に対抗できる最大の武器はやはり知識・知恵なのだと気づかされます。

今回のノミネート10作のなかでは、最も社会的意義のある作品です。かつ、ファーティマの行く末が気になって読むのが止められないエンタメ本でもあります。

こういった作品が評価される賞であってほしいです。

日本三國

【内容紹介】

【レビュー】

光が死んだ夏

【内容紹介】

【レビュー】

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